<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第63回 OCIとリサイクル(6)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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帰納法と演繹法

ロジックを組み立てる方法に、帰納法と演繹法がある。帰納法は、複数の実例から共通項をまとめることによって、事実を導き出し一般化させる考え方であり、演繹法は、一般的な原則に、対象となる事象を当てはめて結論を導き出す考え方である。

よく引き合いに出される例は、家康も信長、秀吉も、過去生まれてきた人は全員死んだ。だから自分も死ぬというロジックと、人は死ぬ、自分は人である、だから自分も死ぬというロジックである。前者が帰納法であり、後者が演繹法である。

しかし、帰納法と演繹法は二律背反的なものではない。演繹法では、正しいとされる原則が存在することが大前提となる。ところが、多くの場合に大前提となる原則は、帰納法的アプローチをきっかけに形成されることが多い。文明や科学は、この帰納法と演繹法を組み合わせることで発展した。

おまえはすでに死んでいる

筆者は浅学ゆえに、北斗の拳というアニメを観たことがないのだが、有名な「おまえはすでに(もう)死んでいる」というセリフだけは知っている。このケンシロウの言葉は、囲碁や将棋の「詰んだ」状態のことを指す。このセリフは演繹法によって導かれたものだ。この状況に陥れ...