IFRSにおける超インフレ会計の趣旨と概要

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 山本修也
有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 宍戸純子

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第1 はじめに

超インフレ会計(IAS29・IFRIC7)の趣旨と概要

ウクライナを巡る情勢は世界の経済成長の減速要因となるだけでなく、物価上昇を加速する一因とも考えられています。

IFRSに基づく会計処理においては、超インフレ(ハイパーインフレーション)経済下にある企業(又はその子会社など、企業グループの一部)の経営成績及び財政状態の報告に際し、貨幣の購買力が失われるなかで異なる時点で発生した取引等の金額の比較が困難になることを避けるために、物価水準の変動を反映させることを要求しています。

例えば、物価上昇がない平時においては80で仕入れた商品を100で販売する(原価率80%)商流において、仕入れ後のインフレにより物価が50%上昇し販売価格が150となった場合、150の売上と80の売上原価が計上される(原価率53%)こととなり、企業の収益性の期間比較が困難となります。このような場合に、IFRS(IAS29)は売上原価に物価変動の調整を加え120(=80×150%)と表示することで比較可能性を確保します。さらにキャッシュ・フローや特定のBS項目についても同様に物価変動調整を行います。結果として...