会計知識録 第24回 自社株買いによって株価は本当に上がる?

~企業の会計・財務活動を解読~

 公認会計士 溝口 聖規

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自己株式の取得とは、会社が自社の株式を買い戻すことであり、配当と同様に株主還元の手法の1つです。会社の上場、非上場にかかわらず実施されますが、上場会社においては近年、自己株式の取得が増加傾向にあります。また、取得の規模も大型化してきており、2022年4月以降に1,000億円超の自己株式の取得を発表した企業には、NTT(4,000億円)、ルネサスエレクトロニクス(2,000億円)、日立製作所(2,000億円)、富士通(1,500億円)、ヤマダホールディングス(1,000億円)などがあります。日経新聞によれば、2022年4~5月の自社株買い設定金額は4.2兆円(5月26日時点)と、前年同期実績の約2倍となり、コロナ禍前の2019年度の設定額を超えたとのことです。

自己株式の取得は、実質的な会社財産の減少につながるとして債権者保護の観点から原則として禁止されていましたが、2001年(平成13年)の商法改正により配当可能利益の範囲内であれば定時株主総会の決議によって実施可能となりました。その後、2003年(平成15年)の商法改正で、定款授権による取締役会決議に基づく自己の株式の取得が解禁(商法第...