INTERVIEW 公認会計士への信頼を基礎に、より良い社会を作る

~就任にあたっての抱負と今後の取組み~
( 10頁)
日本公認会計士協会 会長 茂木 哲也

〈編集部より〉

日本公認会計士協会(JICPA)の新会長に、茂木哲也氏が就任した。5月の公認会計士法改正で上場会社監査事務所登録制度が法制化されるなど制度の変革が進む一方、サステナビリティ情報の保証など新たな領域が予想されるなど、公認会計士をめぐる状況は変化しつつある。本誌では茂木新会長にインタビューを実施し、今後の取組みについてきいた。

(インタビューは7月22日に実施した。)

1.抱負と今後の取組みの全体像

─ご就任にあたっての抱負を聞かせてください。

私の任期であるこれからの3年間は、公認会計士業界の将来像を決める重要な期間です。公認会計士法の改正に象徴されるように、公認会計士に対する社会からの期待に応え、求められる役割を果たしていくための取組みが必要だと考えています。

JICPAでは先般、新ブランディング施策を本格化させ、新たなタグライン(スローガン)として「信頼の力を未来へ」を掲げました。これは、我々が創り出す信頼によって、明るい未来を切り拓いていく、との思いを込めたものです。役割が拡がる中、一人一人の公認会計士がそれぞれの立場で責任を果たしていくことで、この目標を達成していきます。

─どのような取組みをしていきますか。

取組みの全体像は、ピラミッド型の図(図表参照)で整理できます。

【図表】取組みの全体像

①優秀かつ多様な人材の確保と育成

まず、一番大切なのは人材の確保と育成です。このところ、公認会計士試験の受験者・合格者数は増加傾向にあります。少子高齢化が進む中で、我々の業界を目指す若い人が増えているのはありがたいことで、その流れを保ち続けなくてはなりません。

一方で、課題もあります。一つはダイバーシティのさらなる推進、もう一つはデジタル能力の強化です。ダイバーシティについては私の二代前の会長である関根氏は女性でしたし、大手監査法人の代表者やガバナンスの責任者を女性が務めている例もあり、業界的に比較的進んでいると思います。ただ、そうした実態がまだ世の中に広く知れ渡っていないこともあり、女性比率の向上など大きな改善の余地があります。デジタル能力については、データサイエンティストに代表されるデータ分析の専門家などのデジタル人材に、より多く我々の業界に入ってもらうと同時に、我々自身も研鑽して能力を高めることが求められます。

②既存業務の高度化と基盤...