Q&Aコーナー 気になる論点(323) 人的資本の情報開示(1)

‐これまでの状況‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 2022年9月28日の日本経済新聞朝刊では、今後、人的資本の情報開示が一気に進むと報じていますが、現状はどのような報告書で開示されているのでしょうか。

現状、人的資本の情報は、コーポレートガバナンス報告書や有価証券報告書のほか、統合報告書などで開示されています。

〈解説〉

人的資本の開示状況(1)ーコーポレートガバナンス報告書

企業の競争優位を支え、自社のビジネスモデルを実現するための人的資本の獲得や教育・育成、活用などの情報は、投資家が中長期的な企業価値を評価するために重要であると考えられるようになっています

こうした中、2021年6月に、東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コードを改訂し、[図表1]のように、人的資本に関する原則・補充原則が新設・改訂されています。

[図表1]コーポレートガバナンス・コードにおける人的資本に関する原則・補充原則

原則概要2-4女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保補充原則2-4①・女性・外国人・中途採用者の中核人材への登用等の多様性の確保の考え方、目標、状況を公表すべき・多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針を実施状況と併せて公表すべき3...