ESGと経営財務 第4回 ESGと企業価値─SDGs債の発行と株価の上昇─
京都大学経営管理大学院・経済学部 教授 砂川 伸幸
中京大学経営学部准教授 京都大学経営管理大学院 客員准教授 加藤 政仁
1.ESG時代の企業価値評価
本連載の第3回( No.3578・12頁 )で示したように、環境パフォーマンスの改善は財務パフォーマンスに好影響を与え、企業価値の向上に結び付く可能性がある。また、次回(第5回)で取り上げるが、社会性ファクター(Sファクター)も財務パフォーマンスに好影響を与える可能性がある。したがって、ESG時代の企業価値評価は、従来の枠組みに加え、ESGファクターの影響を考慮する必要があると考えられる。
図表1は、伝統的な企業価値評価で用いる感応度分析のテーブルに、環境パフォーマンスの影響を挿入したものである。現状の企業価値評価額は、4,000(資本利益率=8.0%、資本コスト=6.0%)である。この企業が、温室効果ガスの削減など環境パフォーマンスの向上に取り組む経営方針を明らかにした場合、資本利益率の上昇と資本コストの低下が期待される。例えば、資本利益率が0.2%上昇し、資本コストが0.1%低下すると、企業価値は4,169になる。環境パフォーマンスを反映した企業価値評価額のレンジは、4,000~4,169になると考えられる。
【図表1】ESG時代の企業価値評価:環境パフォーマン...
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