ハーフタイム 生物の構造からみたガバナンス進化への道

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事業体としての企業は、株主利益を追求するための固定的な法的システムではない。たえず変化する経済に対応しながらステークホルダーの利益を追求する人間の組織である。この定義は、最近ではガバナンス上の通念となっているが、ここではダーウィンの進化論や生物進化学の知見に基づき、改めてガバナンス向上の決定打として考えてみたい。

1. ダーウィンの進化論によれば、生物の生き様は①生存闘争、②自然選択(自然淘汰)、③変異の法則に集約される(『種の起原』岩波文庫)。企業に当てはめると、①は限られた経営資源を巡る競争、②は組織文化(情報)の伝承と環境の変化への対応、③はイノベーションやM&Aなどによる急速な進化に相当する。やや市場至上主義的な解釈になるが、一つでも怠ると増殖力(成長力)と寿命(存続可能性)が低下しやがて絶滅する点も共通する。

2.生物には3つの特徴がある。①外界と細胞は膜で仕切られている。②日々食物・水・エネルギーを摂取し老廃物を排出し、37兆個ともいわれる細胞は日々新旧交代を繰り返して新陳代謝を行う。③自分を複製する遺伝子をもつ。企業でも類似の特徴が認められる。分子生物学者の福岡伸一氏は上記①...