<INTERVIEW>サステナビリティ時代の会計教育と課題 一般財団法人 会計教育研修機構 理事長 手塚 正彦氏

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一般財団法人 会計教育研修機構 理事長 手塚 正彦

昨今、サステナビリティ情報の開示や持続可能な中長期的視点での経営が求められるなど、企業を取り巻く環境は大きく変わり続けている。

こうした環境変化を踏まえ、監査の対象領域や公認会計士に期待される役割も拡大している。一方、“本業”である上場企業の監査を巡っては、不正を見抜く力の向上などが課題としてあげられ、上場会社監査事務所登録制度が法定化されるなど、監査の信頼性に厳しい目も向けられている。

そこで本誌は、監査人である公認会計士が能力を発揮するための土台である「教育」に着目。実務補修・継続的専門研修(CPE)などを含めた教育の現状や、あるべき会計教育とはどういったものなのかを聞いた。

1.公認会計士を取り巻く環境

―公認会計士を取り巻く環境変化をどう捉えていますか。

まず、企業を取り巻く環境変化について正しく認識することが大切です。

バブル経済の崩壊を契機とした金融構造改革、長引くデフレ、経済の急速なグローバル化、IT技術革新などが、ビジネスや産業構造に大きな変化をもたらしました。インターネットやAIが、新たな可能性を拓き、既存のビジネスに大きな影響を与えているのは好例です。ビジネスが複雑化し、規模も拡大している現状において、膨大なデータを効率的に収集・集計・分析し、それを基にビジネスの在り方を変革するDXも常識になりました。

また、最近では、世界の産業政策と金融政策は、持続可能性を追求する方向に転換しました。マルチ・ステークホルダー主義やSDGsが企業経営に浸透するなど、サステナビリティは、いまや最も重要な経営課題です。そして、サステナブル金融へのシフトが、企業情報開示に変革を求め、現在、国際的なサステナビリティ情報開示基準の策定が急速に進んでいます。

我々公認会計士は、このような環境変化の影響について各自が考え、変化に適応しなければ、能力が陳腐化し、プロフェッショナル市場において淘汰される懸念すらあります。

―そのような環境変化のなかで、どのような課題を感じていますか。

企業の課題からお話します。ある企業のトップの方に「経営は『仕組み』と『人』である」と言われたことがあります。環境が変化すれば、経営の「仕組み」もそれを支える「人」も、変化に適応すべく変わらねばなりません。過去30年近くにわたり、会計基準と監査基準の国際化、金商法と会社法...