<INTERVIEW>新しい資本主義と人的資本の開示 シブサワ・アンド・カンパニー 代表取締役社長 渋澤 健氏
2021年10月に発足した岸田政権は経済政策として「新しい資本主義」を掲げ、「新しい資本主義実現会議」(実現会議)でその実行計画などを議論してきた。「経済財政運営と改革の基本方針2022」では中核に「人への投資と分配」を据えた。2023年3月期の有価証券報告書からは、人的資本の開示が求められるなど、「人的資本への投資・開示」への関心が高まっている。 国際的には国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)でサステナビリティ開示基準の策定が進められており、そちらの動向も注目されるところだ。 そこで本誌では、実現会議の委員とISSB議長の特別顧問を務める渋澤健氏にインタビューを実施。「新しい資本主義」やISSBでの議論について話をきいた。 (インタビューは1月13日に実施した。) |
1.「新しい資本主義」
――まずは「新しい資本主義」のことからお尋ねします。「新しい資本主義」はなぜ、必要なのでしょうか。
岸田首相が雑誌への寄稿 ① でも明らかにされていましたが、一言で言えば「外部不経済を資本主義に取り込む」ためです。
これまで、資本主義はその発展の一方で、環境問題や社会問題などを「外部不経済」、つまり「市場の外部にある不利益なもの」として取り残してきた側面があります。それを改めようというわけです。「包摂性がある資本主義(inclusive capitalism)」とも言い換えられると思います。
――近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まっていますが、それとも関係するのでしょうか。
ESGへの取組みは「これまで取り残してきたE(環境)とS(社会)を、G(ガバナンス)で対処する」ことなので、「外部不経済への意識」だとも言えます。その点で、「新しい資本主義」ともリンクするでしょう。そう考えると、「新しい資本主義」は必ずしも目新しいコンセプトではないかもしれませんが、今の時代において大切な考え方です。
――2022年6月7日には、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定されました。注目すべき点はどこですか。
「インパクト」という言葉が盛り込まれたことです。この言葉が政府の政策文書に記載されたのは、初めてのことかもしれません。
例えば、文中に以下の記載があります。
個社の短期的収益を重視する視点から、社会的価値を重視する視点への転...
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