IFRSをめぐる動向 第151回 公開草案「国際的な税制改革‐第2の柱モデルルール」

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 井上 雅子
PwCあらた有限責任監査法人 米国公認会計士 高橋 慎太郎

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1.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は、2023年4月のIASB会議で議論された公開草案「国際的な税制改革‐第2の柱モデルルール」について、公開草案の内容も含めて説明します。このテーマは、IFRSを任意適用する日本企業の今3月決算において、その動向が特に注目されているものです。なお、本稿の内容は今後のIASBの討議状況によって変更される可能性があり、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

2.公開草案の公表の経緯

(1)背景

2021年12月、経済協力開発機構(OECD)は、第2の柱モデルルールを公表しました。本モデルルールは、経済のデジタル化から生じる課税上の課題に対処するための2つの柱で構成された解決策の1つであり、世界のGDPの90%以上を占める135以上の国および法域によって合意されたものです。

第2の柱モデルルールは、大規模多国籍企業グループ①が事業を営む国または法域において稼得した所得に対して最低限の税金(最低法人税率15%による税...