<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第82回 保険とIFRS会計基準(8)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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パブロ・ピカソ

天才画家ピカソの絵が分かるという人が世界中にどれくらいいるのか知らないが、筆者は正直分からない。40年ほど前に東京国立近代美術館で開催されたピカソ展を観た際に不思議な感動を覚えたことは記憶にあるが、やはり何が良いのかは分からなかった。どうしても、普通に描けばいいものをと思ってしまう。ピカソの若い頃の絵を観ると、とても写実的で、ピカソの画家としての素晴らしい描写力に驚く。それが何故突然あんな絵を描くようになったのか。

20世紀初頭にピカソらによって生み出された新しい芸術手法はキュビズムと呼ばれる。日本語では立体主義とも呼ばれるが、キューブは立方体という意味なので、立方体主義とでも訳す方が正確なようだ。キュビズムとは、平面である絵画に、どうやったら空間・物体・事実などを描けるのかを追求することによってたどり着いた手法である。例えば、横を向いた女性を平面に描く場合、片方の目しか見えない。しかし、その女性には両目があるという事実を描写したい。ゆえに、横向きなのに正面から観たような両目の女性を描いた。簡単に言えばこういうことらしい。2次元の絵画の世界に無理やり3次元の立体を詰め込もう...