<2023年3月期決算>KAMの特徴的な事例と記載のポイント(後編)

金融庁 企画市場局 企業開示課 課長補佐 鹿子木慎亮
 企業会計専門官 清野 恭平
 係長 澤村 泰行

( 34頁)

前回( No.3603・24頁 )に続き、「監査上の主要な検討事項(KAM)の特徴的な事例と記載のポイント2022」(以下「事例集2022」)の内容を紹介しつつ、2023年3月期におけるKAMの記載のポイントについて解説します。

4.特徴的な事例

KAMの記載は、本適用2年目においても、企業とのコミュニケーションを踏まえた監査人による創意工夫のもと、様々なKAMの記載が見られました。その中でも、他の監査人の参考となる特徴的なKAMの事例を紹介します。

(1)特徴的な事例①‐図表を用いて監査手続の全体像を記載

特徴的な事例の1つ目として、株式会社商工組合中央金庫(監査人:PwCあらた有限責任監査法人)の事例を紹介します。本事例においては、貸出金等に対する貸倒引当金の評価に関して、内部統制の評価手続と実証手続による監査手続の概要が図示されており、図表を用いて監査手続の全体像が示されています【図表7参照】。

【図表7】㈱商工組合中央金庫の事例

図表においては、左から右に向かって貸倒引当金の計算プロセスがステップごとに図示され、各ステップに対応する内部統制の評価手続と実証手続が計算プロセス図の下に並ぶ構成とな...