Q&Aでわかる TCFD提言の情報開示

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士/サステナビリティ情報審査人 衣川 清隆

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はじめに

本稿では、「いまさら聞きにくい?」と思う方も多いと思われるTCFD提言の概要を2つの狙いをもって解説したいと思います。1つは、有価証券報告書や統合報告書等における気候変動対応開示の作成及び理解にお役立て頂くことです。もう1つは、サステナビリティ開示全般についての基本概念の理解にお役立て頂くことです。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の公開草案や欧州のサステナビリティ報告指令(CSRD)等において、TCFD提言に基づく情報開示を求めていること、環境評価を行う非営利団体CDP(旧称:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の設問もTCFD提言に準拠するなど、TCFD提言はサステナビリティ情報開示の国際的なフレームワークとなっているからです。なお、本稿において、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であり、筆者の所属する法人の見解ではないことをあらかじめお断りします。

Q1

気候変動などサステナビリティ情報開示がなぜ重要視されるのでしょうか。

世界的に、気候変動などサステナビリティへの取組みは、企業経営の中核となる重要な経営アジェンダとなっています。投資家にとっても、企業価値を...