Q&Aコーナー 気になる論点(338) リース会計基準案(2)

‐リースの識別‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 企業会計基準委員会(ASBJ)が、2023年5月2日に公表した企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」(リース会計基準案)及び企業会計基準適用指針公開草案第73号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」(リース適用指針案)では、これまで強調されていなかったリースの識別を提案しているのはなぜですか。

リース会計基準案では、リースの識別は、リースの定義と合わせて、借手が貸借対照表に計上する資産・負債の範囲を決定するものであることから、IFRS第16号「リース」と整合的なリースの識別を提案しています。リースの識別が強調されるのは、国際的な会計基準で指摘されていたファイナンス・リース(FL)かオペレーティング・リース(OL)かについての境界線の会計問題が、リースかサービスかに移動したことを意味します。

〈解説〉

リース会計基準案の公表

リース会計基準案では、借手のすべてのリースについて資産・負債の計上を提案しています(31項)。開発にあたっては、借手の会計処理と貸手の会計処理で齟齬が生じないよう、借手のための会計基準の新設ではなく、企業会計基準第13号「リース取引に関する会...