「リースに関する会計基準(案)」の詳細解説(上)

 公認会計士・税理士 太田達也

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Ⅰ はじめに

企業会計基準委員会から、令和5(2023)年5月2日付で企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」(以下、「会計基準案」)および企業会計基準適用指針公開草案第73号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」(以下、「適用指針案」)が公表された。同年8月4日まで意見募集を受け付けるとされている。

IFRS第16号「リース」(以下、「IFRS第16号」)の基本的な考え方を取り入れており、リースの借手においては、短期リースおよび少額リースを除いて、すべてのリースについて使用権資産およびリース負債の計上を義務づける内容が提案されている。

本稿は、公開草案の段階の内容に基づいており、今後の確定段階で内容を再確認していただきたい。なお、本稿の意見にわたる部分は、私見に基づくことをお断りしておきたい。

Ⅱ リースの識別

1.リースの定義

リースの定義は、次のとおり定められている。すなわち、「リース」とは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分をいう(会計基準案5項)。IFRS第16号と同様の定義であり、原資産に対する使用権が借手に移転する...