[連載対談]キーパーソンに訊く重要テーマ 第3回 「基準設定の行方」

企業会計基準委員会・サステナビリティ基準委員会 委員長 川西 安喜
青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘

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Ⅰ.ここが訊きたい

2023年6月2日、企業会計審議会会計部会が開催され、「国際会計基準に関する対応」をテーマに討議が行われた。

わが国では、2013年6月19日に企業会計審議会総会において「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」が公表され、「任意適用要件の緩和」、「IFRSの適用の方法」及び「単体開示の簡素化」についての方針が公表されIFRSの採用(アドプション)ではなく任意適用を進めてきた。以来、10年間が経過し、前掲の会計部会における東京証券取引所の資料によれば、任意適用企業は2023年5月19日時点で274社(東証上場会社の時価総額の46.5%)となっている。

一方、国際会計基準審議会(IASB)では、2022年11月24日に、のれんの会計処理について減損のみのアプローチを維持することを議決し、わが国が長年にわたって主張してきたのれんの償却処理の検討を停止した。これは、同年6月にアメリカの財務会計基準審議会(FASB)がのれんの償却問題に関して基準開発のプロジェクトから外すことを決定していたことから予想の範囲内であったものの、国際基準におけるのれんの償却の議論が...