会計知識録 第30回 「限界利益」は実務でどう使う?~損益分岐点分析による利益管理の方法~

~企業の会計・財務活動を解読~

 公認会計士 溝口 聖規

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はじめに

読者の皆さんは、限界利益という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。限界利益は管理会計特有の利益であり、管理会計の参考書などでは損益分岐点売上高の把握や短期の利益計画などに役立つとされています。とは言うものの、損益分岐点売上高などの計算はできても、限界利益を実務でどう活用したら良いかイメージが持ちにくいといった声もよく耳にします。

今回は、実務における限界利益の具体的な活用方法について、設例を使って解説したいと思います。

限界利益とは

限界利益とは、売上高から変動費を控除した利益です。変動費とは、売上高や操業度に比例して増減する費用のことです。他方、変動費以外の費用を固定費といいます。限界利益は商品やサービスを1単位販売したときに追加的に得られる利益であり、売上に連動して増減します。

限界利益=売上高‐変動費

そして、限界利益から固定費を差し引くと営業利益を求めることができます(注)。

営業利益=限界利益(売上高‐変動費)‐固定費

(注)本稿では、売上原価、販売費及び一般管理費のそれぞれに、変動費と固定費が含まれるとします。

なお、売上高に対する限界利益の割合を示す指標を「限界利...