会計知識録 第31回 日常生活にも役に立つ差額原価収益分析を使ってみよう!

~企業の会計・財務活動を解読~

 公認会計士 溝口 聖規

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読者の皆さんは、差額原価収益分析という言葉を耳にしたことはあるでしょうか? 差額原価収益分析は、企業の意思決定において活用される管理会計の手法です。難しそうに聞こえるかもしれませんが、企業だけでなく、私たちの日常生活においても活用できる便利なツールです。今回は、差額原価収益分析について、設例を使いながら説明したいと思います。

意思決定会計とは

差額原価収益分析は、管理会計における意思決定会計に属する分析手法の1つです。意思決定会計とは、企業経営における様々な意思決定を支えるサポートツールであり、意思決定の内容によって概ね次のように区分されます。

意思決定
の区分
対象
期間
時間
価値
意思
決定者
具体的内容
戦略的意思決定 中長期 考慮する 経営者層 設備投資、
組織構造、
M&Aなど
業務的意思決定 短期 考慮しない 部門長等 受注の可否、
自製or購入、
製品構成など

会社の意思決定は、大きく戦略的意思決定と業務的意思決定に区分されます。戦略的意思決定は構造的意思決定とも言われ、組織再編、新製品開発、工場建設、設備投資などの中長期にわたる経営の基本構造に関する意思決定であり、一般的には経営者層が行います。一方、業務的意思決定は、...