<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第97回 概念フレームワーク(13)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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ざっくりでいいから

上司からの指示で一番困ったのは、「ざっくりでいいから」という枕詞のついた指示だ。この枕詞がつく時は、まだ正確な数字が出てきていない段階で、見積りの数字を教えろという状況で使われる。たとえば、決算の集計をしている最中に今期の業績をざっくりでいいから教えてくれ、と聞かれる場合である。こちらは、その業績数値を把握するために必死になって集計作業をしている最中である。「あと一週間お待ちいただけたら、正確な数字が出ます」と言っても「正確な数字でなくてもいいんだ、ざっくりでいいんだよ、ざっくりで」と返される。合理的にある程度の数値が予想できる場合はよいが、こちらも全く見当がつかない場合もある。

根拠のない数字を口から出まかせに言うわけにはいかないので、なんらかの理屈を考えて数字を見積もらなければならない。数字を出す以上は、あまり大きく外したくないので、それなりの労力が必要となる。なので、筆者は上司が「ざっくりでいいから」と言ってきたときは、大変に警戒をしたものだ。

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