書評 岡田 譲治・加藤 裕則 著『監査役の矜持‐曲突徙薪に恩沢なく』
一般社団法人監査懇話会 会友 板垣 隆夫
監査役(含む監査委員、監査等委員)は何をする仕事か世間的には殆ど知られていない。企業人でさえかつて「閑散役」と揶揄された時代のイメージで捉えている人が多数であろう。しかし現実の監査役、特に常勤の多くは内外の事業拠点を飛び回る多忙な日々を送っている。とりわけ近年ガバナンス改革が進む中、守りのガバナンスに留まらずその職責は確実に拡がりつつある。著者たちは、そうした監査役を故事を引用して恩沢がなくとも矜持を持って曲突徙薪(きょくとつししん)を続ける存在として提示している。
著者の岡田譲治氏は、三井物産副社長、常勤監査役を経て日本監査役協会会長などの要職を歴任し、内外のガバナンスの全般動向と経理・監査役実務の両方を熟知する稀有な存在である。加藤裕則氏は朝日新聞記者として長く企業経営を取材して、特に監査役に関する造詣の深さには定評がある。この2人がタッグを組み、監査役の在り方を中心に、日本企業が直面するガバナンス上の課題を幅広く取り上げ、具体的事例を交えて解説を加えたのが本書である。
本書の読みどころは、以下の3点である。第1は、監査役の現状をリアルに見つめ、問題点を鋭く剔抉した上で、その変革の道筋...
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