IFRSをめぐる動向 第158回 資本の特徴を有する金融商品に関する公開草案

PwC Japan有限責任監査法人 公認会計士 梅澤 薫

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1.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。本稿では、IASBが2023年11月に公表した公開草案「資本の特徴を有する金融商品」(IAS第32号「金融商品:表示」、IFRS第7号「金融商品:開示」及びIAS第1号「財務諸表の表示」の修正案)(以下「公開草案」といいます)の主な内容を紹介します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

2.背景

IAS第32号は金融商品を金融負債と資本性金融商品に分類する際の原則を示しています。近年、両方の特徴を有する複雑な金融商品が多く発行されており、IAS第32号の分類の要求事項をこれらの金融商品に適用する際の課題が認識されています。2018年6月、IASBはこの課題に対応するためにディスカッション・ペーパー「資本の特徴を有する金融商品」を公表しました。それに対する市場関係者からのフィードバックを受けて、IASBは、IAS第32号に対する根本的な変更を行わないことを決定し、代わりに、いくつかの要求事項の明確化によっ...