特別寄稿 上場制度を巡る2023年の回顧と2024年の展望
東京証券取引所 上場部長 菊池 教之
1.はじめに
株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)は、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を推進し、国内外の多様な投資家にとっての魅力を高める観点から、2022年4月に市場区分の見直しを実施しており、2023年は、この見直しの実効性を向上させることに主眼を置いて、様々な上場制度、あるいは運用上の取組みを行ってきた。並行して、政府方針を受けた四半期開示の見直しや支配株主・支配的な株主が存在する場合の少数株主保護の在り方などに関しても検討を進めてきたところである。
本稿では、2023年における新規上場、あるいは上場廃止の動向を振り返りつつ、同年中に実施したこれらの取組みを紹介し、本年以降の展望についても可能な範囲で言及していくこととしたい。
2.新規上場・上場廃止の動向
2023年の国内のIPO件数は、前年から2社増加の92社となり、直近10年で2番目に高い水準となった(図表1)。
【図表1】国内IPO件数の推移
市場区分別にみると、高い成長可能性を有する企業向けの市場である「グロース市場」へのIPO件数が65社となり、引き続き、情報・通信業や...
- 経営財務データベースで続きを読む
-
無料 2週間のお試しはこちら
すぐに使えるIDをメールでお送りします