サステナビリティ開示に向けた実務の勘所(後編) 非財務情報開示を契機としたサステナビリティ経営の実装

デロイトトーマツリスクアドバイザリー合同会社  
 コンピテンシー事業部 パートナー 公認会計士 松澤 伸
 コンピテンシー事業部 ディレクター 中島 史博
 コンピテンシー事業部 ディレクター 米国公認会計士 今福 浩史

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はじめに

前号 で解説の通り、2023年6月公表のIFRSサステナビリティ開示基準 S1号(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項)及びS2号(気候関連開示)を踏まえ、我が国ではサステナビリティ基準委員会(SSBJ)がサステナビリティ開示基準の開発に着手しています。サステナビリティ開示基準は2024年3月31日までに公開草案が公表され、2025年3月31日までに最終化される予定であり、公開草案公表後、多くの企業が対応の検討に本格的に着手することが見込まれています。

本稿では、効率的な制度開示対応のみならず、非財務情報の制度開示を契機とした、戦略、業務、人材、組織等における実務上の勘所について解説していきます。

なお、本文中の見解に関しては、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

1.ISSBへの取組みアプローチ案

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、「現在開発中のサステナビリティ開示基準に関する今後の計画」において、開発中のサステナビリティ開示基準が遅くとも2025年4月1日より始まる事業年度から早期適用が可能となる旨を公表していますが、強制適用のタイミングにつ...