書評 米山 正樹・秋葉 賢一・浅見 裕子 共著『投資のリスクからの解放-純利益の特性を記述する概念の役割と限界-』

(中央経済社/定価6,600円(税込))

企業会計基準委員会 副委員長 紙谷 孝雄

( 44頁)

『投資のリスクからの解放-純利益の特性を記述する概念の役割と限界-』(以下「本書」という。)は、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)が2006年に公表した討議資料「財務報告の概念フレームワーク」に記述されている「投資のリスクからの解放」概念を研究対象とし、その役割と限界を問い直すことを目的としたものである。

本書は、大きく2部構成となっており、第1部「『投資のリスクからの解放』概念の再検討」と第2部「『投資のリスクからの解放』概念と個別基準」から構成されている。

第1部では、「投資のリスクからの解放」を中核に据えることによって、会計基準の体系をどのように再構築できるかを考察している。この中で、第3章「『投資のリスクからの解放』概念の形成」及び第4章「実現と『投資のリスクからの解放』」は、「投資のリスクからの解放」概念がどのように形成されてきたか、また、「投資のリスクからの解放」概念が「実現」や「実現可能」の課題を踏まえつつ、ファイナンス理論に基づきながら、「事業投資と金融投資の区分」と「クリーン・サープラス関係の保持」と合わせたところでより広範囲の会計領域を説明できるという点にお...