プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について

東京証券取引所 上場部企画グループ 中村 咲百合

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1.はじめに

株式会社東京証券取引所(以下「東証」という)は、本年2月26日付で「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について」(以下「制度要綱」という)を公表し、本年3月27日までパブリック・コメント手続きを実施している。

本稿では、プライム市場における英文開示の拡充に係る背景を振り返るとともに、想定している制度変更等の内容について解説する。

2.英文開示が求められる背景

東証市場において、海外投資家は、株式保有比率で30% 、株式総売買金額で67% を占める重要な投資主体となっており、海外投資家に対する適切な投資判断材料の提供や、海外投資家の中長期的な投資参加促進の観点から、英語による会社情報の開示・提供(以下「英文開示」という)の重要性が高まっている。

特に、2022年4月に見直した新市場区分のプライム市場は、「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」と位置付けられていることから、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード(以下「コード」という)の改訂では、補充原則3-1②において、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報につい...