[連載対談]キーパーソンに訊く重要テーマ 第11回「中小監査法人の将来像」
監査法人A&Aパートナーズ 統括代表社員 加賀美 弘明
RSM清和監査法人 シニアパートナー 藤本 亮
新創監査法人 統括代表社員 柳澤 義一
ふじみ監査法人 理事長 山田 浩一
【司会・進行】青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘
Ⅰ.ここが訊きたい
中小監査法人の監査の品質は低いのですか?――これが訊きたい唯一の質問だったと言えるかもしれない。
上場会社の監査人が大手監査法人から中小監査法人に異動していると言われて数年が経つ。2023年も、件数はかなり減ったものの、「大手→中小」が67社と報告されている(昨年は108社、 No.3637・4頁 参照)。わが国の監査市場において大手監査法人が占める割合は、上場会社数で見る限り、かつての80%近い状況から60%以下にまで減ってきている。それに代わって中小監査法人の占める割合が増加し、市場の約1/4を占めている。
こうした状況を背景として、2022年5月の公認会計士法改正によって、従来日本公認会計士協会の自主規制として実施されてきた「上場会社監査事務所登録制度」が法定化されたといえる。同制度は、2023年4月より「上場会社等監査人登録制度」として実施され、2024年9月までの登録申請期間に向けて、既存の監査法人においても登録申請が進められてきている。
法改正に向けての議論が行われた会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)や公認会計士制度部会では、公認会計士・監査審査会の資料等を引用する形で、繰り返し中小監査法人における不適切な品質管理の状況が説明されていた。
中小監査法人の監査の品質を議論すると、関係者からは必ず「中小と一口に言わないでほしい。実態は千差万別なのだから」という反論がある。しかしながら、それは逆に、質の低い監査または品質管理を行っている監査法人もあるということなのではなかろうか。
近年、2021年改訂の品質管理基準によってリスク・アプローチに基づく品質管理が導入され、2022年改正の倫理規則によって、いわゆる15%ルール(5年連続 15%を超えるか、超える可能性が高い状況が継続する場合、5年目の監査意見の表明後に監査人を辞任しなければならない(R410.20))等の規制が導入された。また上場会社を担当する監査法人には監査法人のガバナンス・コード(以下、GC)の遵守が求められる。今や中小監査法人は大きな岐路に立たされているといえよう。
今回は、比較的規模の大きな中小監査法人を代表する方々にお集まりいただき、中小監査法人の現状と将来について忌憚なくお話しいただいた。
(町田祥弘)
Ⅱ.座談会
◆各法人の現状と課題
町田祥弘氏...
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