会計不正への対応 その6(最終回) 社長案件、巻き込まれた実体なき取引
公認会計士・公認不正検査士 安福 健也
( 44頁)
1.はじめに
第6回(最終回)は、会社社長の知人の紹介による新規取引が、取引実態のない架空取引であった事例をとりあげる。甲社は過年度数年に遡及して、多い年度では億(円)単位の架空売上高、架空仕入高の取り消しを中心とした訂正報告書を提出した。本件の事例は日本の会社が過去に繰り返し同様の手口に巻き込まれてきた典型例である。
近年は、経営者関連の不正事例が全体の半数程度を占める。日本の会社社長へ周知するとともに、会社が社長に追従するのではなく、いかにすれば、会社のガバナンス機能を保持し、健全な経営ができるのかを検討したい。
なお、本稿は、取り上げた事例についての網羅的・総花的な紹介ではなく、筆者が重要と認識した事項を抜粋して要約する形をとるものであり、文中に記載の考えなどについては筆者個人の見解である点、ご留意願いたい。
2.事例
製造業を営み、新たな事業領域の拡大を目指す新規上場会社(甲社)社長(K氏)は、知人(L氏)の紹介により新規取引を開始した。甲社が想定していた取引内容は、【図1】のとおり、L氏が経営する乙社より商材を仕入れ(購入代金は仕入取引と同時に支払)、L氏の知...
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