ハーフタイム Well-beingはいかに達成されるか

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Well-being(幸福や幸福増進と訳される)は2015年に国連が設定したSDGs(17の持続可能な開発目標)の1つで、5年前に働き方改革関連法が施行されたわが国では「気候変動」と並ぶ新たな開示テーマとなり、以来「人的資本」の価値を上昇させる要因として注目されている。ところがひたすらハードワークで勝ち進んできた企業等にあっては、社員の意欲を掻き立てる方法も企業業績との関係も分からず漠然とした戸惑いが広がっている。また背景となる基礎概念がいまひとつ曖昧だから専門家の意見も断片的になり易いのだ。

そこで、本稿ではまず2千年前のギリシャの都市国家に立ち戻ってWell-beingの本来の意味を探し、現代幸福論と照らし合わせつつ、我々自身の幸福増進法を考えたい。

「人間は社会的動物である」で有名なアリストテレスの『政治学』(Politics,Oxford World's Classics)は、経済的富、健全な身体、完全な魂を3つの善(goods)と呼び、Well-beingまたは Happinessの基礎とみている(BookⅢ)。また、性癖・習慣・理性の3つによって達成される人間的な幸福は、単なる...