ハーフタイム 国家の市場介入と補助金の問題点-IAS20号に照らして見直す

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国家と市場は常にどこでも、一方は政治を動かし他方は経済を動かすという役割分担の関係にあるわけではない。米国では1930年代の大恐慌以前は自由競争モデルを主体とする市場体制(政府は補助的役割に徹す)だったが、次第に国家が主導権を握り、財政支出によって雇用と消費者需要を守る計画化体制に移行した。とくに画期的・戦略的製品の開発には政府が巨額を支出し「政府こそ産業構造を転換できる主役」だという信念が強まってきた(J・K・ガルブレイス『経済学と公共目的(上)』講談社文庫)。

明治政府も自ら殖産興業を率先し、軌道に乗った新事業を次々と民間に払い下げて近代化を加速した。コロナ禍が一段落したいまも政府による市場介入が顕著になっている。例えば中小企業向けゼロゼロ融資はいまも高水準の残高が残っており、22年導入の燃料補助金は間もなく終わるはずだったが一部はいまも続いている。脱炭素関連やEV・半導体関連の補助金や少子化対策としての子育て支援金のほか、民間の宇宙ビジネス市場を成長させる宇宙戦略基金も間もなく始動すると報道されている。

これらのプロジェクトを推進する側にはそれ相応の理由はあるが、増々膨れ上がる国家債...