書評 鈴木 広樹 著『適時開示からみた監査法人の交代理由』

(清文社/定価3,520円(税込))

 弁護士 山口利昭

( 70頁)

かつて証券会社で企業審査を担当され、その後は研究者として上場会社の開示情報の分析を得意とされる鈴木広樹氏が、ひさしぶりに企業情報開示に関する書籍を執筆された。2013年に「検証‐裏口上場 不適当合併等の事例研究」を執筆され、上場会社の適時開示から日本企業の深い闇を模索する鈴木氏のスタイルが印象的だったが、そのスタンスは本書でも変わらない。なぜ「監査法人交代の理由及び経緯」に関する適時開示がおもしろいのか、たかが会計監査人の異動理由の開示情報にすぎないではないか、とも言えそうである。ただ、一見すると開示規制に対する誠実な姿勢が窺がわれる日本の上場企業ではあるが、よく読むとその裏に「お化粧開示」に至る人間模様が垣間見える。まさに副題のとおり「日本企業の開示姿勢を検証する」ところに本書の面白さがある。

著者は、監査法人の交代理由の開示規制が厳格化した2019年から2022年までの約730件の「監査法人交代の理由及び経緯」に関する開示例を分析して、そこに日本企業が自分の会社をよく見せたいときに「ついついやってしまう」開示姿勢の傾向を類型化している。本書は、そのような「お化粧開示」を(上から目線で...