<INTERVIEW>IASB(国際会計基準審議会) ニック・アンダーソン理事にきく「IFRS第18号の適用に向けて」

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基準開発に10年もの歳月をかけたIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」が本年4月に公表された。損益計算書に新たな区分と小計を導入するなど、全ての関係者に影響を与える基準であり、まずは基準の正確な理解が重要となる。本誌は投資家の視点から基準開発に取り組んできた、ニック・アンダーソンIASB理事にインタビューを実施。IFRS第18号の開発の背景やねらい、適用に向けて留意すべき点などを聞いた。

1.開発の目的

―IFRS第18号開発の目的について教えてください。

IFRS第18号の開発は、投資家により良い情報を提供し、企業の業績を比較・分析しやすくすることを目的としています。より良い意思決定ができるようにするための取組みですから、企業の業績に関する情報を財務諸表の中でいかに正しく伝えられるようにするのかが開発の柱になっています。

―基準開発に10年もの歳月がかかりました。

企業をはじめ全ての関係者に影響を及ぼす性質の基準ですから、丁寧に議論してきました。皆さんの意見を聞いて少し提案を変えたり、取り下げたりした部分もあります。公開草案に多くのコメントが寄せられたので、それらを吟味するのにも時間を要しました。

―取り下げた提案にはどのようなものがありましたか。

例えば、経営者が定義した業績指標(MPM)について、「損益計算書に関係するところだけではなく、それ以外もカバーした方がよいのではないか」という見解が一部の関係者にはありました。私もその方がよいかもしれないと思っていましたが、プロジェクトを着実に進めるためにそこまで拡大しないことになりました。基準作りではコストベネフィットの観点が重要ですし、何らかの妥協は避けられません。

2.IFRS第18号のポイント

―基準の要点を伺います。損益計算書では、収益と費用を新たに定義された3つの区分(営業、投資、財務)に分類するとともに、2つの新たな小計(営業利益、財務及び法人所得税前利益)を追加しました。まずは、新区分と小計のポイントを教えてください。

現行の損益計算書は、トップライン(最上段)に「収益」の科目があり、ボトムライン(最下段)に「当期純利益」があります。両者の間の部分については、企業が表示する小計を自由に決めることができます。

以前、私はグローバル株式の投資家として活動していたのですが、このような自由があったため、初めて見る企業の場合...