Q&Aコーナー 気になる論点(378) 人的資本会計

‐サッカー選手は資産計上されているのか‐

早稲田大学 大学院会計研究科 教授 秋葉 賢一

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 2024年11月21日の日本経済新聞朝刊(以下「新聞記事」)では、「マンUに学ぶ人的資本会計 成長の原動力、どう評価」という見出しにおいて、現行の会計ルールでは、人への投資は資産ではなくコストとみなされ、課題解決のヒントは、欧州プロサッカークラブの財務諸表にあるとしています。その財務諸表では、サッカー選手が資産計上されているのでしょうか。

いいえ。資産計上されているのは、選手という「ヒト」ではなく、選手登録権という「権利」であり、しかも、契約期間中、契約選手を独占的にプレーさせることができる権利を選手獲得時に前払いしているため資産計上しているという伝統的な会計処理です。

〈解説〉

選手登録権の資産計上(1)‐新聞記事

新聞記事では、米国上場するサッカーのイングランド・プレミアリーグの名門クラブ、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)の年次報告書における貸借対照表上、無形資産の内訳に「登録権」という項目があり、これは、主に選手を他クラブから獲得する際の支払(このため、生え抜き選手などは対象にならない)による権利を資産として契約期間にわたって償却し、ケガなどで投資を回収できなくなれば減損の対...