会計基準の長い日々 第2回 再評価会計は永遠に

~IASC、コア・スタンダード・プロジェクトの進展

 公認会計士 西川 郁生

( 34頁)

スティリング氏と再評価会計

IASCのメンバーは個性的な人物が多かったが、ピーター・スティリング(Peter Stilling)氏もその1人だ。初老の英国紳士である。いつも三つ揃いのスーツを着ていて、髪もピシッと整えられていた。スティリング氏は固定資産会計の議事を仕切っていた。IASの固定資産は、標準処理である取得原価評価のほかに代替処理である再評価会計を認めていた。「英国の会計の特徴は何か?」と問われたときに、最初に思い浮かぶのが再評価といわれるほど有名な会計である。その一方で、英連邦諸国域外では殆ど関心がない会計処理である。

再評価会計では、固定資産を任意に定期的な間隔で評価替(主に評価上げを想定)する。償却資産の簿価は引上げられ、引上げられた簿価を基に償却される。その結果、毎期の償却を全期間合計するとその額は取得原価より大きくなる。償却負担額を大きくすることに再評価の意義があるように見える。再評価の度、中古の償却資産を改めて購入したかのように償却をせよ、というようなものだからだ。個別の資産に任意の物価変動会計をしていると言い換えてもいい。英国の象徴的な会計であるのは理解できた。だが、...