会計基準の長い日々 第3回 カーズバーグ卿の秘策
~IAS第39号金融商品会計基準の誕生
公認会計士 西川 郁生
( 42頁)
難航する金融商品プロジェクト
コア・スタンダード・プロジェクトで最も難航したのが、金融商品プロジェクトであった。プロジェクト自体は89年に第1回起草委員会が開かれて以来議論を進めていた。比較可能性改善プロジェクト終了後にあって、金融商品プロジェクトはコア・スタンダード・プロジェクトの中心にあった。基準の核となるのが認識測定(簡単に言えば会計処理にかかる部分)で、時価会計をどのように取り込むかが焦点であった。プロジェクトは開示・表示を含み、金融商品の会計処理を網羅する包括基準の完成を目指していた。
比較可能性改善プロジェクトの最終議決が行われた93年11月の理事会では、金融商品の公開草案E40の基準化に向けた審議も行われた。基準化の議決を前にしてE40はコメントを踏まえて多くの修正を行っていた。公開草案に修正を加えるのは当然のことであった。だが、そのときはコメントを踏まえた修正内容の是非を、再度世に問うべきという声が圧倒的となる。修正後の文書は公開草案E48として再公開されることとなった。
翌94年の理事会で、E48には、引き続き米国を含む各国会計基準設定主体からの反対が多く、11月には認識・...
- 経営財務データベースで続きを読む
-
無料 2週間のお試しはこちら
すぐに使えるIDをメールでお送りします