Q&Aコーナー 気になる論点(381) IASBの引当金に関する公開草案(3)

‐測定‐

早稲田大学 大学院会計研究科 教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)が、2024年11月に公表した公開草案「引当金‐的を絞った改善:IAS第37号の改正案」では、測定に関して、わが国の資産除去債務と同様に、割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率とする提案をしているのでしょうか。

現在のIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」では、負債に固有のリスクに、企業の不履行リスクが含まれるかどうかを明記していません。これに対して改正案では、不履行リスクを調整せず、無リスクレートで表わされる、貨幣の時間価値に関する現在の市場の評価を反映した税引前の利率とすること、さらに、義務を決済するために必要となる支出の金額又は時期をめぐるリスクが将来キャッシュフロー(CF)の見積りに反映されていない場合には、当該リスクも反映することを提案しています。

〈解説〉

改正案の概要

改正案によれば、IASBは、2020年にIAS第37号に対し以下の的を絞った改善を目的とした基準設定プロジェクトを作業計画に追加し(BC1項)、今般、公開草案として公表しました。

(1)負債の定義及びその定義を適用する認識基準を、2018年3月改正の「財務...