<INTERVIEW>IAASB議長・副議長に聞く 国際サステナビリティ保証基準のポイントと今後の展望

  

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サステナビリティ情報開示や保証の導入が各国で議論されるなか、国際監査・保証基準審議会(IAASB)は2024年11月12日、保証のグローバルベースラインとなる国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000 「サステナビリティ保証業務の一般的要求事項」を公表した。本誌は、トム・サイデンスタイン議長(以下、議長)とジョセフィン・ジャクソン副議長(以下、副議長)に基準のポイントや企業側に求められる対応などを聞いた。

1.基準開発の経緯

編集部  ISSA5000の開発の経緯を教えてください。

議長  開発には2つの背景があります。まず、世界的にサステナビリティ開示に関する基準が収斂してきたこと、それから、世界各国において開示の義務化に向けた議論が進んだことです。そのなかで規制当局などから、サステナビリティ開示基準の要求事項により特化した具体的な保証基準の開発が要請されました。欧州などでは既に保証の義務化を決定しており、その導入に間に合う形で開発してほしいとの要請もありました。そこで、サステナビリティ保証のグローバルベースラインとなることを目指してISSA5000を開発しました。

2.ISSA5000のポイント

編集部  国際保証業務基準(ISAE)3000とISAE3410からの変更点を教えてください。

副議長  バリューチェーン上の企業情報の保証手続きに対する要求事項を加え、ダブルマテリアリティの概念を導入しました。各企業がどのようなプロセスで開示すべきサステナビリティ情報を識別しているのかについての理解も求めています。

保証業務実施者が、別の保証業務実施者が発行した保証報告書を活用する「ワン・トゥ・メニーレポート(one-to-many report)」という概念も導入しました。報告企業は、自社の管理下にはないバリューチェーンの上流あるいは下流の企業の情報も含めて開示する必要があるため、この概念の導入は重要な要素となるでしょう。

編集部  財務諸表監査とサステナビリティ情報の保証の在り方に違いはありますか。

副議長 似ている点と異なる点があります。いずれもリスクベースアプローチを採用しており、監査や保証の業務実施者による企業の理解が基礎である点は同様です。保証水準については、合理的保証と財務諸表監査、限定的保証と財務諸表レビューがそれぞれ対応しています。過去の定量的な開示に対する手続きは財務諸...