<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第130回 リース(9)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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1930年代

近・現代の歴史を10年単位で見比べてみると、第二次世界大戦のあった1940年代が際立った10年間だったということに異論はないだろう。その1940年代に隠れて見失いがちであるが、現代のビジネス社会に重要な影響を与えている制度や仕組みの多くは実はその前の1930年代に形成されている。

たとえば、会計にかかわる人間にとって馴染み深いのは、アメリカの証券二法である。これは、1929年に起こった株式市場の大暴落を受けて整備された「証券法(1933年)」と「証券取引所法(1934年)」であり、現在の我々の仕事の多くは、この2つの法律がそのルーツであると言っても過言ではないだろう。

しかし、1930年代には他にも様々な重要なことが起きている。たとえば、ルーズベルト大統領が行ったニューディール政策である。その一環として最もインパクトがあったのが、財政出動による公共事業である。これによって雇用を創出し、その乗数効果によってアメリカは大恐慌から抜け出すことに成功した。また、年金制度や失業保険、あるいは生活保護といった社会保障制度もこの時期に生まれている。

これらの制度、政策は戦後の多くの国の経済政策...