Q&Aコーナー 気になる論点(387) バーチャルPPAの会計処理案

‐非化石価値の当初認識‐

早稲田大学 大学院会計研究科 教授 秋葉 賢一

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 企業会計基準委員会(ASBJ)が2025年3月11日に公表した実務対応報告公開草案第70号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い(案)」(公開草案)では、需要家が発電により生じた非化石価値を受け取る権利について、金額を合理的に見積ることが可能となった時点において費用処理を行い、対価の支払義務に係る負債を計上することを提案しています。一般的な財の購入取引と異なる会計処理を提案しているのはなぜでしょうか。

公開草案では、非化石価値は、引渡しよりも前に使用した電力に係る温室効果ガス(GHG)の排出量の削減に充てることができるという性質を有しており、この点において棚卸資産等の一般的な財とは異なっているとしています。

〈解説〉

取引の概要

公開草案では、企業の脱炭素に向けた取組みの1つとして、発電事業者から需要家に、電力の取引を伴わずに非化石価値を移転するバーチャル電力購入契約(PPA)により、当該非化石価値と別途調達する再生可能電力でない電力を組み合わせることによって、実質的に再生可能電力を調達したのと同じ効果を得られる手法がみられるとしています(BC1項)。

今...