役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<228> 退任代表取締役の退職慰労金の大幅減額
弁護士 小林公明
( 35頁)
Q
退任代表取締役の退職慰労金の決定について株主総会決議により委任を受けた取締役会において、内規の定める基準額から大幅に減額した額を支給する旨の決議は適法か。
A
1 結論
当該取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められない限り適法である。
2 関係判決(最判令6.7.8判例秘書L07910040)
本Q&A217「慰労金議案を付議すべきか否か(2)」(本誌3632号)において、本質問にまさにフィットする裁判例(宮崎地判令3.11.10判例秘書L07651384、以下「1審」、その控訴審判決福岡高宮崎支判令4.7.6判例秘書L07720230、以下「原審」)を取り上げたが、その後なされた上告審判決(前掲最判令6.7.8、以下「本判決」)は、原審を破棄し、1審を取り消して、退任代表取締役の請求をいずれも棄却した。
当該事件(以下「本件事件」)は退職慰労金の大幅減額、それも代表取締役に関する事案であることから、上記審級の各判決は議論を呼び、中でも会社側敗訴の原審を破棄した本判決に対する実務の関心は極めて高い。
以下これを参照しながら述べる。
3 本件事件の請求の内容
本判決によると、本件事件の原告...
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