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実例で学ぶ 海外出向者にまつわる税務・給与・社会保険 新型コロナウイルスへの対応実例から学ぶ海外赴任者の一時帰国長期化等に伴う問題への対応策

EY税理士法人 税理士 藤井 恵

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◆はじめに

昨年初めから始まったコロナ禍により,海外赴任者を巡る税務については,これまでにない取扱いが必要になる点が多々存在しています。この連載では 2020年6月号 の段階で,国内払いの源泉徴収の必要性をご紹介しました。その後も,一時帰国者の海外給与・手当・福利厚生の取扱いや日本での確定申告の取扱い,居住者・非居住者の判定の考え方についてご紹介してきました。

その間,200社以上の大企業の人事部門,税務部門の皆様とお話しする機会を得ました。各社とも本件に関して,追加の出費や手続き上の対応を強いられています。しかし,その追加コストについては,海外赴任者に関する税務知識の有無や,海外赴任中の処遇に関するポリシーの有無により大きく異なっているのが特徴です。

一方で,手続き関連の対応の遅れは知識や制度の有無だけによるところではありません。人事・税務担当者は今回の問題を早期に認識し,早急に対応したいと思っていても,経営者がこの件についてなかなか耳を傾けなかったり,他社の動向を見て対応を決めようとする傾向が強い場合もあります。そうすると担当者は正しい処理を行う以前に,他社状況を把握することに忙しくされてい...