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移転価格税制についての素朴な疑問⑮ 単年度検証か複数年度検証か(1)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 56頁)

Ⅰ はじめに

1 問題の所在

2 検討の視点

3 検討対象

Ⅱ 国税庁の見解と納税者の対応の整理

1 国税庁の見解

2 納税者の対応

3 まとめ

Ⅲ 比較対象に係る複数年度データの使用

1 国税庁の見解

2 納税者の対応

3 まとめ

※2月号掲載

Ⅳ 検証対象に係る複数年度データの使用

1 国税庁の見解

2 納税者の対応

3 まとめ

V まとめ

1 検証方法の対比

2 主要な留意点

3 さらなる疑問

Ⅰ はじめに

1 問題の所在

すでに本連載でも繰り返し述べたように、現在の移転価格税制の実務において、最も頻繁に用いられている独立企業間価格の算定方法は、企業情報データベースに依拠した取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method、TNMM)である。TNMMは、国外関連取引に係る営業利益の水準と比較対象取引に係る営業利益の水準を比較する方法とされているが、実際に企業情報データベースから得られる情報は、取引単位ではなく企業単位である場合がほとんどである1。しかも、通常は、比較対象企業が一社に絞りこまれることは稀であるから、複数の比較対象企業(又はその候補)2によって形成される営業利益率のレンジによって...