ドイツ子会社から日本親会社への配当時のドイツ配当源泉税のEU法抵触問題
ドイツ・EUビジネスコンサルタント 池田 良一
1 はじめに
ドイツの税務分野での最高裁判所であるミュンヘンの連邦税務裁判所(Bundesfinanzhof:BFH)は、2025年6月3日付の決定において、在ドイツ子会社から日本親会社への配当が問題となっている係争案件の審理をいったん中断して、ルクセンブルクの欧州司法裁判所(European Court of Justice:ECJ)に対して、EU法抵触審査(先決裁定手続)を申請した。当該係争案件は、ドイツから日本への配当時のドイツ配当源泉税の納付義務が対象となっており、デュッセルドルフ税務裁判所判決(第1審)に対する上告審(最終審)である(対象年度は2009年~2011年)。
他の在独日系企業においても、同時期(2009年4月1日~2016年12月31日)に日本親会社が在ドイツ子会社から配当を受け取っているケースについて、配当源泉税の納付に対して異議申立てを行い、当該案件の異議申立て決定を先送りにしているケースも多々見られる。このEU法抵触審査(先決裁定手続)は、日本でいったら、違憲審査に相当するもののひとつである。本稿では、今回、EU法抵触審査の審理が開始された案件を解説し、背景理解...





