[全文公開] アングル 外国人・外国法人による不動産投資
税理士 川田 剛
▶はじめに
最近、外国人(外国法人を含む)による不動産投資が不動産価格高騰との関連で問題になっている。
そこで、今回はこの問題について、筆者の国税職員時代の経験等も交えながら考えてみることとしたい。
▶米国の場合
筆者はかつて(1983年~1986年(昭和58年から昭和61年)まで)在サンフランシスコ総領事館領事として勤務し、同市郊外のサンブルーノ市に居住していたことがある。
サンフランシスコ空港に隣接する同市は、太平洋戦争開始後、敵国人とみなされた米国西海岸在住の日本人や日系人が、ユタ州などに設けられた「強制収容所」に向けて出発するための集合場所とされていた競馬場があったところである (注) 。
(注)その跡地は、現在では大規模なショッピングセンターになっている。
当時、米国にとって外国人である日本人や、日本人が親や祖先であっても本人自身は米国人である日系人は、自分達の住んでいた住宅や耕作していた農地から強制的に立ち退きを迫られ、ユタ州のマンザナー等にあった内陸の収容所に送られ、そこで過酷な生活を送らされることとなった。
その措置につき米国政府が正式に謝罪したのは、戦後約50年を経過したレーガン政権になってからである。
それらについて補償がなされたのは、さらにその後のことである。
この措置の是否については横においておくとして、当時、米国政府は、日本人及び日系人による土地、建物、農地等の所有状況を正確に把握していた。
▶オーストラリアの場合
これは、筆者が国税庁で国際調査を担当していたころの話であるが、当時、日本人による対外投資、なかでもオーストラリアへの不動産投資が急拡大していた。
そして、それらのなかには、短期で売買を繰り返し、多額の利益をあげている者もいると推定された。
そこで、オーストラリアの税務当局(ATO)を訪問し、日本人による不動産投資に関する情報を提供してくれるよう求めたところ、先方は心よくそれに応じる姿勢を見せてくれた。
しかし、その見返りとして先方から、オーストラリア人による日本への不動産投資に関する情報の提供を求められた。しかし、日本側にはそのような資料(外国人による対日不動産投資に関する情報)はなかった。
そのため、貴重な情報の存在を目の前にしながら、それらの情報を入手することができなかったという悔しい経験をしたことがあった。
▶わが国の現状
円安の進行や「失われた30年」の影響等もあり、近年では、外国人によるわが国の不動産投資が活発化している。このような状況をみてみると、少なくとも外国人又は外国法人名で取得されている不動産の登記情報について、それを税務当局に連絡するというシステムを構築すべきである。
その際、法人名による取得については、外国法人か内国法人かを問わず、その実質所有者名についても登記を義務付け、それらの実質所有者名を含めたところで税務当局への連絡を義務付けるべきである。
なお、この種の通報制度をどのように仕組むのかについては、 相続税法58条 で規定する法務大臣等の通知制度が参考になる。
▶国内不動産取得等に伴う税務
次に、非居住者である外国人又は外国法人がわが国に所在する土地や建物等を取得する場合に生じる税務問題について考えてみたい。
この段階で問題となってくるのは、次のような税目である (注) 。
(注)ただし、これらはあくまで取得者が自己の名前を出して取得した場合であり、仮名、借名等により行われた場合への対応は別途の手当てが必要となってくるので念のため。
①不動産取得税(道府県税)
イ 納税義務者
道府県税であるこの税の納税義務者は、「道府県内において不動産を取得した者」であり、個人、法人を問わないこととされている( 地方税法73条の2 )。
ロ 不動産の取得
そしてここでいう「不動産の取得」には、有償無償を問わない。また、その原因が売買、交換、贈与、寄附、法人に対する現物出資等も含まれるほか、原始取得か承継取得かの別も問わないこととされている(取扱通知 第5章3(1))。
ハ 取得の時期
不動産の取得の時期は、契約内容その他から総合的に判断して現実に所有権を取得したと認められるときである。
ニ 課税標準
この税の課税標準は、取得時の価格である。
※なお、家屋の改築をもって取得とみなされる場合には、改築によって増加した価格となる。
ホ 税率
税率は取得価格の100分の4である( 同法73の15 )。
ヘ 納期
納期は、各道府県の条例の定めるところによることとされている( 同法73の16 )。
ト 申告義務
不動産を取得した者は、条例の定めに従い、取得した不動産の種類、所在地、取得年月日等について、文書により、当該不動産所在の市町村等を経由して道府県知事に「申告」又は「報告」をしなければならない( 同法73の18 )。
②登録免許税(国税)
登録免許税は、不動産の登記、登録等を行った場合に課税される「国税」である。
イ 納税義務者
納税義務者は不動産の登記、登録等を行う者、個人又は法人である( 登録免許税法3 )。
ロ 課税標準
原則として登記時の時価( 同法10 ①)。ただし、当分の間は固定資産税課税台帳に登録された価格(同法附則7)。
ハ 税率
不動産の売買にあっては、ロで定められた価格の1,000分の20。(ただし、相続及び所有権の保存登記にあっては1,000分の4)( 同法9 )。
ニ 納付
原則は現金で、ただし、一定の要件に該当すれば印紙納付も可( 同法21 、 22 )。
▶あとがき
校正の段階で、韓国では外国人による住宅購入を規制する手段として、居住義務や滞在資格の申告を義務付けているという報道に接した。
これらの報道についても、他の政策とあわせて適用することで、より効果を上げることになるのかもしれない。一考の余地がありそうである。




