【初心者向け解説】今月のピックアップvol.6「新人経理マンの印紙税入門 第1回 印紙税の概要(性格、課税範囲、納税義務者等、納付方法)」

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今月は、3604号「5分で学べる! 新人経理マンの印紙税入門 第1回 印紙税の概要(性格、課税範囲、納税義務者等、納付方法)」です。
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5分で学べる! 新人経理マンの印紙税入門 第1回 印紙税の概要(性格、課税範囲、納税義務者等、納付方法)

宮川 博行
【略歴】
国税庁審理室課長補佐、国税庁消費税室課長補佐、税務大学校研究部教授、東京国税局調査第三部統括国税調査官、課税第二部統括国税調査官(間接諸税担当)、王子税務署長、東京国税局課税第二部消費税課長、札幌国税不服審判所部長審判官、江戸川北税務署長を経て、現在、税理士
(2020年4月現在)


はじめに
印紙税は、日常の経済取引等に伴って作成される各種の文書のうち、印紙税法に規定する特定の文書を課税対象とし、その文書を作成した者が課税文書に所定の収入印紙を貼り付けて納付する「自主納税方式」を採用しています。このため、各種の文書を作成した場合には、その文書が印紙税の課税文書となるものか否かの判断(課否判断)を、文書を作成した者が自ら行う必要があります。

しかしながら、最近における経済取引の複雑化、広域化やIT化などに伴う事務処理方式の変更等もあって、文書の様式や形式、作成形態も多種多様なものとなり、課否判断に苦慮する文書が多くなっています。また、印紙税調査において課税漏れが指摘された事例をみますと、現場担当者の知識不足などもあって課否判断が適切に行われていなかった事 例や、階級定額税率が適用される文書の記載金額の捉え方に誤りがあった事例などが多く見受けられています。

そこで、この講座では、文書作成に従事することの多い経理事務に携わる方を中心に、文書の課否判断のポイントや誤りの多い要因などを交えながら、印紙税の基本的な考え方をはじめ、課否判断に当たっての実務上の留意点などについて解説してまいります。

第1章 印紙税の概要
1 印紙税の性格
印紙税は、契約書や領収書など経済活動に際して作成される広範な文書に負担を求める税です。これは経済取引に伴い作成される文書の背後に経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し、法律関係が安定化するという面に着目し、文書の作成行為の背後に税を負担する能力、いわゆる担税力を見出して課税を行おうとするものです。

印紙税は、経済取引という現象をとらえ、取引によって生ずる経済的利益に着目して課税しようとするものですから、流通税の一種といわれていますが、経済取引そのものに課税するものではなく、経済取引に伴って作成される文書に課税するものですから、文書税ともいわれています。

2 課税範囲
印紙税の課税対象は、印紙税法に定める特定の文書です。金融取引など各種の経済取引や権利の授与その他の行為等が行われた際に、その事実を明らかにするために作成される証書や帳簿などに当たるものです。具体的には、印紙税法別表第一「課税物件表」において、不動産の譲渡に関する契約書、請負に関する契約書、手形や株券などの有価証券、保険証券、領収書、預貯金通帳など特定の文書を20に分類し、列挙された文書だけに課税する、いわゆる「課税物件限定列挙主義」を採っています( 印法2 、別紙「印紙税額一覧表」参照)。

課税物件限定列挙主義の印紙税法では、課税物件表に列挙された文書だけが課税されることになっていますから、それ以外の文書は、どのような文書を作成しても課税されることはありません。また、印紙税の税率は、定額の税率(200円、400円、4,000円など)を基本としつつ、より担税力があると認められる特定の文書については、取引額に応じた階級定額税率を適用するとともに、特定の文書には免税点を設け、少額な取引に係る文書には課税しない仕組みとなっています。

インターバル    ~Interval~ 印紙税の歴史
 印紙税は、1624年に八十年戦争の戦費調達のため、税務職員ヨハネス・ファン・デン・ブルックによりオランダで考案され、その後、ヨーロッパ各国へ普及したとされています。
また、印紙税は、アメリカの独立戦争の一つの原因になったとされています。1765年、財政難に陥ったイギリスは、当時植民地であったアメリカにおいて、新聞・パンフレットなどの出版物、あらゆる証書、許可証、トランプのカードなどに印紙を貼ることを義務付けたとされています。これが植民地の人々の反発を招き、アメリカ独立戦争への端緒となったといわれています。
我が国では、1873年(明治6年)にヨーロッパにならって地租改正時に現在の印紙税の基となった「受取諸証文印紙貼用心得方規則」(太政官布告)の公布が始まりで、金銭の受取書や借用書などが課税されました。
その後、明治32年から昭和42年まで「旧印紙税法」が施行され、昭和42年に現行の「印紙税法」が施行されました。


3 納税義務者等

印紙税の納税義務は、課税文書を作成した時に成立し、課税文書の作成者が、作成した課税文書について印紙税を納める義務があります( 印法3 ①)。

4 納付方法
課税文書の作成者は、原則として、課税される印紙税に相当する金額の収入印紙を文書に貼り付ける方法で印紙税を納付しなければなりません( 印法8 ①)。

この場合に作成者は、文書と印紙の彩紋(模様)とにかけてはっきり印紙を消さなければなりません( 印法8 ②)。収入印紙を消す方法は、文書の作成者又は代理人、使用人その他の従業者の印章又は署名によることとされています( 印令5 )。

なお、納付方法の特例として、次のような現金納付、申告納付の方法が設けられています。

① 税印押なつによる納付( 印法9
② 印紙税納付計器の使用による納付( 印法10
③ 書式表示による納付( 印法11
④ 預貯金通帳等に係る一括納付( 印法12

インターバル    ~Interval~ 印紙の起源
 収入印紙は、国の税金や手数料の納付を証明するために、契約書や領収書、申請書などに貼り付ける紙片です。その起源は次のとおりです。
世界で初めて収入印紙の制度を導入したのは1624年のオランダでした。しかし、これは印刷された紙片ではなく、文書にエンボス(型押し)を施して、税金の支払いを証明するものでした。初めて印刷物の形態となったのは、18世紀末のイギリスであると考えられています。
日本では、印紙・証紙は明治初頭に西洋から導入されています。日本初の納税印紙(養蚕印紙)は明治5年に発行されています。
(出典:平成28年12月 独立行政法人国立印刷局「印紙・証紙 小さなグラフィック・デザインの世界 下邑政弥コレクションを中心に」)


おわりに

今回は、印紙税の概要についてご紹介しました。次回からは、印紙税法の各論及びそれぞれのテーマに沿った事例の紹介をしていきたいと思います。

印紙税額一覧表

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