【初心者向け解説】今月のピックアップvol.2「消費税の概要(消費税の仕組み、課税の対象、納税義務者、課税期間)」

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今月の初心者向け解説

今月は、3551号「新人経理マンのための消費税入門 第1回 消費税の概要(消費税の仕組み、課税の対象、納税義務者、課税期間)」の内容をご紹介いたします。

中村茂幸
新人経理マンのための消費税入門 第1回 消費税の概要(消費税の仕組み、課税の対象、納税義務者、課税期間)


【略歴】
東京国税局課税第二部消費税課課長補佐、札幌国税不服審判所国税審判官、東京国税局課税第二部統括国税調査官(間接諸税担当)、水沢税務署長、川崎南税務署長等を経て、現在、税理士
(2019年4月現在)


はじめに

 消費税は、平成元年4月に創設されて以来「平成」とともに30年が経過し、基幹税として位置づけられるなど定着してきています。平成31年10月には、消費税率が8%から10%に引き上げられるとともに、8%の軽減税率が導入される予定であることもあり、最近ではマスコミにもよく取り上げられ、特に関心が高まっているように見受けられます。

 この30年の間、消費税率が3%、5%、そして現行の8%へと引き上げられ、仕入税額控除の方式が変更されるなど、社会経済状況に応じた大小の改正が何度か行われました。そのため、創設当初と比較すると制度自体がやや複雑になっている状況にあることは否めません。

 この講座では、初めて消費税の事務に携わる方にとってはご理解の一助になるよう、また、消費税の実務を経験している方にとっては頭の整理ができるよう、消費税法の仕組についての基本的な事項をできるだけ分かり易く解説しました。

 しかしながら、できるだけ分かり易くするために法律の規定と異なる表現をしており言葉足らずとなっている部分がある一方、誤解の恐れがある事項については法律の規定をそのまま紹介しているような部分がありますことを十分ご承知おきください。

 この講座を活用し、一人でも多くの方々に「消費税」を知っていただき、更には消費税の知識をより深く習得するきっかけにしていただけたら幸いです。

 では、さっそく消費税入門講座を始めていきたいと思います。

第1章 消費税の概要

第1節 消費税の性格、特徴

1 消費税は消費に対して広く公平に課税

消費税は、「消費」に対して、広く、公平に、負担を求める間接税です。したがって、医療、福祉、教育などの限定された一部のものを除き、国内で行われるほとんど全ての物品の販売、サービスの提供等及び保税地域から引き取られる外国貨物を課税の対象とし、取引の各段階でそれぞれの取引金額に対して6.3%の税率(地方消費税1.7%を合わせると8%)で課税されます。

2 消費税は消費者に転嫁

消費税は、事業者の販売する物品やサービスの価格に上乗せされて、製造業者から卸売業者へ、卸売業者から小売業者へ、小売業者から消費者へと次々に転嫁され、最終的には、全て消費者に転嫁され、物品の購入やサービスの提供を受けることを通じて消費者が負担することとなります。

※ 税金が価格の一部として移転することを税の「転嫁」といいます。

3 税の累積を排除

消費税は、生産、流通の各段階で二重、三重に税が課されることのないよう、売上げに対する消費税額から仕入れ等に係る消費税額を控除し、税が累積しない前段階税額控除方式が採られています。

4 法人税・所得税と消費税

 法人税及び所得税の課税物件(対象)は「所得」とされ、税額算定の基準となる課税標準は「所得の金額」とされており、いずれも金額で表示されます。

 これに対し、消費税では、「資産の譲渡等(資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供)」つまり「行為」、「取引」が課税物件とされ、課税標準は「課税資産の譲渡等の対価の額」とされています。消費税法を理解する上では、法人税法等との相違に留意する必要があります。

※ このように消費税の課税物件は「行為」ですので、例えば、本来は「『保険料を対価とする役務の提供』は非課税」と表現すべきですが、「『保険料』は非課税」などと表現する場合があります。

第2節 消費税の仕組み

基本的な流れと各段階の納付税額の計算例は次のとおりとなります。

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第3節 消費税の概要
【緑色表記の箇所については、対象のご契約のログインIDで 税研ウェブサービス からログイン後、法令の原文をご確認いただけます】

1 課税の対象

(1) 国内取引

国内において事業者が事業として対価を得て行った資産の譲渡等(資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」)が消費税の課税の対象となります( 消法4 ①)。

なお、「国内において事業者が事業として対価を得て行った資産の譲渡等」以外の取引(例えば、国外における取引、消費者が行う取引、資産の譲渡等に該当しない取引など)は、消費税の課税の対象とはなりません(これらの取引を一般的に「不課税」といいます。)。

(2) 輸入取引

保税地域から引き取られる外国貨物が課税の対象となります( 消法4 ②)。

2 非課税取引

(1) 国内取引

国内において事業者が事業として対価を得て行った資産の譲渡等のうち、土地の譲渡及び貸付け、有価証券等の譲渡など、消費税の性格から課税の対象とすることになじまないものや、医療、学校教育など社会政策的な配慮から課税することが適当でない取引は、非課税とされています( 消法6 ①、別表第一)。

(2) 外国貨物

国内における非課税取引とのバランスを図るため、保税地域から引き取られる外国貨物のうち有価証券等などについては非課税とされています( 消法6 ②、別表第二)。

3 輸出免税取引等

(1) 輸出取引等に係る免税

国内において事業者が事業として対価を得て行った資産の譲渡等に該当する取引から上記非課税となる取引を除いたもの(これを「課税資産の譲渡等」といいます。)のうち、国内から輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け及び輸出に類似した取引で一定のものは、消費税が免除されます( 消法7 )。

(2) 輸出物品販売場における免税

輸出物品販売場(いわゆる免税店)を経営する事業者が、外国人旅行者などの非居住者に対して免税対象物品を所定の方法で販売する場合には、消費税が免除されます( 消法8 ①)。

4 納税義務者

(1) 国内取引

事業者(個人事業者及び法人)は、国内において行った課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除きます。)及び特定課税仕入れ(事業者が国内で行った課税仕入れのうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」又は「特定役務の提供」に該当するもの)について、消費税を納める義務があります( 消法5 ①)。

なお、その課税期間の基準期間における課税売上高及び特定期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、課税事業者を選択する場合を除いて、その課税期間の納税義務が免除されます( 消法9 ①、 9の2 ①)。

特定期間における課税売上高が1,000万円以下かどうかを判定するに当たり、特定期間における課税売上高に代えて、その特定期間に支払った給与等の合計額により判定することができます( 消法9の2 ③)。

※ 「特定資産の譲渡等」とは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」をいいます( 消法2 ①八の二)。

※ 「基準期間」とは、個人事業者についてはその年の前々年、法人については原則としてその事業年度の前々事業年度をいい、「特定期間」とは、個人事業者についてはその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人については原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます( 消法2 ①十四、 9の2 ④)。

(2) 輸入取引

輸入者は、保税地域から引き取る課税貨物について消費税を納める義務があります(事業者に限らず、個人として輸入する場合の個人も納税義務者になります。)( 消法5 ②)。

5 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係

(1) 事業者向け電気通信利用役務の提供

資産の譲渡等のうち、電気通信回線(インターネット等)を介して行われる電子書籍・広告の配信などの役務の提供等を「電気通信利用役務の提供」といい、国外事業者(非居住者である個人事業者及び外国法人)が行う電気通信利用役務の提供のうち、その役務の性質又は取引条件等からその役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものを「事業者向け電気通信利用役務の提供」といいます( 消法2 ①八の三、八の四)。

(2) 特定役務の提供

「特定役務の提供」とは、資産の譲渡等のうち、国外事業者が行う映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として行う役務の提供のうち、その国外事業者が他に事業者に対して行うもの(不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供を除きます。)をいいます( 消法2 ①八の五、 消令2の2 )。

(3) リバースチャージ方式による課税

国内取引に該当する特定課税仕入れについては、「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」を行った事業者ではなく、それらの役務の提供を受けた(課税仕入れを行った)事業者にその申告・納税義務が課されます( 消法5 ①)。このような納税義務者の転換をいわゆる「リバースチャージ方式」といいます。

※ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け又は役務の提供を受けることを「課税仕入れ」といい、給与等を対価とする役務の提供、非課税又は免税とされる資産の譲渡等を受けることは除かれます( 消法2 ①十二)。また、課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものを「特定課税仕入れ」といいます( 消法5 ①)。

6 課税期間

 「課税期間」とは、納付すべき消費税額の計算の基礎となる期間をいいます。課税期間は、原則として、個人事業者の場合は暦年、法人の場合は事業年度が課税期間となりますが、特例として、その課税期間を3か月又は1か月ごとに区分した期間に短縮することができます( 消法19 ①)。


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