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税金裁判の動向【今月のポイント】第205回 財産評価基本通達6が適用されるための「特別の事情」

名城大学法学部 教授 伊川 正樹

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相続財産の評価には財産評価基本通達が定める評価方法を用いるのが通常ですが、それが「著しく不適当と認められる」場合には他の方法によることが許されるとされています( 同通達6 )。

その適用のためには「特別の事情」の存在が必要と解されていますが、要件が不明確であり、課税庁による評価基準の恣意的な「使い分け」のおそれが指摘されています。

今回は、「特別の事情」の存否が争われた事例をみていきましょう。

事実の概要

本件被相続人Aが死亡し、Aの妻、長女X1、長男X2、次男、Aの養子X3の5名を共同相続人(以下「Xら」といいます。)とする本件相続が開始しました。

Xらは、Aの平成21年10月16日付の公正証書遺言及び平...