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税金裁判の動向【今月のポイント】第206回 海外事業のため多国間を移動する役員の「住所」の判定

立命館大学法学部 教授 望月 爾

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経済のグローバル化の進展に伴い、企業の海外進出による人の国際的移動も活発化しています。そのような中で、税法上の「住所」の判定やそれに基づく居住者と非居住者の区分は、ますます困難なものとなっています。この点に関する判例としては、海外財産の贈与をめぐり相続税法上の「住所」の所在が争われた最高裁平成23年2月18日判決(武富士事件、本誌2011年4月号掲載)がありました。

今回は、国際的に事業を展開し多国間を移動する会社の代表取締役の、所得税法上の「住所」の判定と居住者該当性が争点となった事案をご紹介します。

事実の概要

X(原告・被控訴人)は、日本国内で出生し、日本国籍を有し、国内に滞在するときは、名古...