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税金裁判の動向【今月のポイント】第211回 取引相場のない株式の譲渡の低額譲渡該当性

名城大学法学部 教授 伊川 正樹

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個人が法人に対して資産を低額譲渡した場合には、みなし譲渡課税が行われます。その対象となるかどうかは、対価額が時価の2分の1未満であるかどうかが基準とされているため、当該資産の評価額が問題となります。特に取引相場のない株式の評価については、財産評価基本通達の例により算定することとされていますが、通達の文言が不明確であるために、判断に迷う場面があります。

この点が争われた事案の高裁判決は本連載(第197回。2019年7月号)で紹介していますが、この度、最高裁が注目すべき判断を示しましたので、その内容をみていきましょう。

事案の概要

改めて事案の概要をみておきます。

A社は、金属製品等の製造・販売を行う株式...