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税金裁判の動向【今月のポイント】第219回 納税猶予期限の確定事由「譲渡等」該当性

広島修道大学法学部 教授 奥谷 健

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ご承知のように、農業等を営んでいた被相続人から一定の相続人が一定の農地等を相続や遺贈によって取得し、農業を営む場合又は特定貸付け等を行う場合には、一定の要件の下に相続税額の一部について納税が猶予されるという特例があります。この特例は、当該農地等について譲渡等があった場合などには、その農地等納税猶予税額の全部又は一部を納付しなければなりません。では、どのような場合にこの「譲渡等」があったと認定されるのでしょうか。

今回は、これに関連して、転用や相続人間での持ち分の交換が「譲渡」に該当するか争われた事例を紹介しましょう。

事実の概要

原告の父であるP(以下「亡P」という。)は、個人で農業を営んでいました...