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税金裁判の動向【今月のポイント】第232回 財産評価基本通達に基づかない評価が許される「特別の事情」

立命館大学法学部 教授 安井 栄二

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相続財産は、一般的には財産評価基本通達の定める評価方法に基づいて評価されます。ただし、「特別の事情」が存在することで、その評価が「著しく不適当と認められる」場合には、その他の方法による評価が許されるとされています( 同通達6 )。

それでは、どのような場合に「特別の事情」が存在すると判断されるのでしょうか。この点が争われた事案について、本連載(第205回、 2020年3月号 )で、東京地判の内容を紹介しました。その後、この事案は最高裁まで争われ、このほど最高裁判決が出されました。今回は、この事案について再びみてみましょう。

事実の概要

改めて事案の概要をみておきましょう。

本件被相続人Aは、平成24年6月17...